ごあいさつ
みなさんこんにちは。平成27年度理事のtakakiです。
おそらくこの投稿が新しい数学部ウェブサイトのコラム第一号になると思います。
これからも記事を増やしてゆくつもりですので、お読みいただいたご感想や批評をコメント欄などでお寄せ頂けると大変幸いです。
さて、今回お届けするコラムは今年度の斯文祭(文化祭)で展示したものを再編集したものです。
サマーウォーズと数学
「よろしくお願いしまぁぁぁす!」でおなじみのアニメ映画「サマーウォーズ」をご存知ですか?
日本、特に長野県上田市(一生に一度は行ってみたい)を舞台に、仮想世界が当たり前になった近未来に生きる大家族の絆を描いた細田守監督作品なのですが、この作品にはいくつかの数学に関係した話が登場しています。
作中で主人公の高校生、小磯健二くんは数学オリンピックの日本代表候補という設定でした。
ここではそんなサマーウォーズに登場した数学の話題についていくつか解説したいと思います!本当は二つの話題について解説したかったのですが、時間とやる気が足りないため、今回バージョン1として一つだけ掲載し、そのうちやる気が出たらバージョン2も書きたいと思います。
それでは、今回はこの話題について…
年月日から曜日を求めてみよう
作中、長野への移動シーンで健二は、夏希先輩の誕生日を聞いて生まれた曜日を暗算で求めていました。あれは一体、どのようにして求めたのでしょうか。
ツェラーの公式
作中では、割り算の余りを求める計算であるモジュロ演算(mod)を使って曜日を求めたと説明されていましたが、モジュロ演算を行うまでにどのような計算を行われていたのか見てみましょう。
年月日と曜日を変換する公式としては、ツェラーの公式がよく知られています。では早速見てみましょう。
(注記)以下の数式の複数箇所でとすべきところをと誤って表記しておりました。お詫びして訂正いたします。
(例えば、平成27年度斯文祭1日目(2015/09/12)ならば、になります。)
求める曜日をとおくと
ただし、はを超えない最大の整数を表し、, とする。
うーん、なんだか難しそうな記号が登場していますね… そこで、この公式に登場した記号を解説します。
まず、 は、 を超えない最大の整数を表します。たとえば、 ならば、 を満たす最大の整数ですから、 になります。ちなみにこの記号はガウスさんというドイツの数学者が考案したため、「ガウス記号」と呼ばれています。
つぎに、 はモジュロ演算を表します。先ほども説明した通り、モジュロ演算はある数を割り算したあまりを求める演算(剰余演算)です。たとえば、 ならば、ですから、 になります。
と曜日の変換表は以下のようになります。
h | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 0 |
曜日 | 日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
さあ、あとはそれぞれの値を求めて公式に代入して解くだけです!やってみましょう。
ここでは例として平成27年度斯文祭1日目(2015年9月12日)で求めてみます。
斯文祭1日目は
TeX打ちがものすごくしんどいので画像になっておりますがご了承ください…
斯文祭1日目はどうやら のようですから、この表で見ると土曜日です。よかった、合っていましたね。
みなさんの誕生日などではどうでしょうか。時間があるときにぜひやってみてください。
それにしても公式だけ見れば難しそうな計算ですが、計算量的には頑張って練習すれば暗算できないこともありません。(ただし私にはできませんが…)
もっと簡単に!
また、この公式にわざわざあてはめなくても特定の日付の曜日をあらかじめ暗記しておけば、その日と求めたい日の日数の差を計算して を計算すれば、より簡単に曜日を求めることができます。
物は試しです。やってみましょう。
2000年1月1日は土曜日であることがわかっているものとして、2015年9月12日の曜日を求めてみましょう。
2015年9月12日から2000年1月1日の間の日数を求めると…
まず、2000年~2014年までの15年間は365×15=5475(日) ですが、2000年,2004年,2008年,2012年はうるう年でしたから、4を足して5479日です。
残りの9か月と12日を計算すると、
1,3,5,7,8月は31×5=155(日)、2月は28日、4,6月は30×2=60(日)そして、のこりの11日を足すと、合計日数は5733日になります。ここで を求めてみると、答えは0と出ます。
このとき、元の日付(2000年の元日)の の値は0でしたが、この日数で の値を求めると0になります。
もとの曜日 に今求めた曜日 を足すと、 となり、これを先ほどの表にあてはめてみると、無事、土曜日と求められます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。公式というとただテスト前に必死に暗記するいやなものだと思っている方も多いと思います。(私もその一人ですが…)しかし、数学の世界にはさまざまな面白い公式があります。ツェラーの公式もその一つです。
実際に年月日から曜日を求めるときには専用のウェブサイトを使ったりすることが多いでしょうが、もしかしたらそのなかにもこの公式が使われているかもしれません。
このほかにもたくさんある、「面白い公式」について興味をひかれたら、ぜひみなさんも調べてみてください!
シリーズの続編はおそらく… 健二が作中に解いたRSA暗号について、だと思いますので、ご期待ください。
また、なにか質問や記事について気になることなどがあれば、どうぞお気軽にコメント等でお寄せください。
ではまた、近いうちにお会いできるといいですね。
追伸: 数学部関係者の皆さん、お忙しいとは思いますが、もし暇があればぜひコラムの投稿をお願いします。